米国探鳥の記 その2(1992.3.1〜8)



(1)パロアルト市内、(2)サンフランシスコ湾岸のショアライン

  今回は西海岸の冬の様子を見ることができました。場所はパロアルト(Palo Alto)市内とその付近のサンフランシスコ湾岸地域です。

【パロアルト市内】
 パロアルトはサンフランシスコの南東にあり、サンフランシスコ湾の最も奥に近いところにあります。高級住宅街といった感じのとても気持ちのいい町でした。早朝鳥を見て歩いていると、市役所のゴミ収集車がきて、公園のゴミ箱をかたずけて、周囲のゴミを拾っていきました。ハイテク企業が多いせいか、市の財政が豊かなんでしょうか、町はゴミひとつなく清掃が行き届いています。

 まず最初に気づく鳥はナゲキバト (Mourning Dove) です。尾の先がとがった少し小さめのハトで、その名のとおりアーウーと悲しんでいます。コマツグミ (American Robin) もにぎやかにさえずっています。これはアカハラによく似ており、キュルッ、キョロンという鳴き声はなかなか綺麗です。ヒメレンジャク (Cedar Waxwing) も大群でホテルの塀のツタの実をを食べに来ており、チーチーと賑やかです。これはキレンジャクより少し小さく、羽先の模様が目立ちません。ホテルの池にはコブハクチョウが飼われており、その池にマガモが来たり、ダイサギ (Great Egret) が来たりしました。木には赤いメキシコマシコ (House Finch) がさえずっており、シジュウカラの代わりに顔はヒガラで背中が茶色のクロイロコガラ (Chestnut-backed Chikadee) が、目白の代わりには目の周りが一部を除いて白いスナイロモズモドキ (Hutton's Vireo) が枝移りしています。エナガの代わりはヤブガラ (Bushtit) で、これは灰褐色でほとんど模様がなく地味な鳥ですが、チリチリチリととても賑やかです。冠羽がすこしあるカラ類のハイエボシガラ (Plain Titmouse) もいて、テンテンテンといった感じで鳴きながら枝移りしていました。

 少しホテルの外へ出ると、少し赤みが強いサクラ、モクレン、ブラシノキ等のたくさんの花が咲いてました。大きな声でジェイジェイとさわいでいるのはアメリカカケス (Scrub Jay) です。オナガの感じですが、群れでは行動していません。カケスの仲間のようです。マネシツグミ (Northern Mockingbird) は歌でも有名なようにいろんな鳴き声でさえずっていました。飛ぶときには羽の白い模様が目立ちます。アンナハチドリ (Anna's Hummingbird) はブンブンブンとハミングのような声をたてて飛び回っています。この鳥は図鑑ではくちばしの周りがあざやかなピンク色になっていますが、横から見ると、その部分は黒っぽく見えます。正面のある角度のときだけ、カワセミの背中の青い色をピンクに変えたようなあざやかな色が見えるのには驚きました。

 黒覆面のユキヒメドリ (Dark-Eyed Junco) やミヤマシトド (White-Crowned Sparrow)もいます。公園ではムクドリ大の黒い鳥テリムクドリモドキ (Brewer's Blackbird) が多数群れていました。住宅街であるにもかかわらず、土地がゆったりしているせいもあるんですが、非常に大きな木がたくさんあり、花がたくさん咲き実もたくさんなるので、鳥もたくさんいるようです。また、木の種類も多いため、鳥の種類も多くなっているようです。

【サンフランシスコ湾岸】
 湾岸は一面の湿地帯で鳥の楽園です。パロアルト市は湾岸自然保護区 (Baylands Nature Preserve) を設定しており、資料館には鳥の剥製が展示され、スライドによる説明が行われていました。満潮時に少し水に浸かる部分にはイネ科植物のCord Grassが、その少し上部にはアツケシソウ (Pickle Weed) が一面に生えています。この上に木道を設置して観察ができるようにしてありました。隣接市であるマウンテンビユー (Mountain View) 市ではショアライン (Shoreline) という公園を設定しています。ここは一切の動物の連れ込みを禁止しており、餌もやらないようにとの注意書きもあり、非常に自然度が高い公園です。また、湿地帯はとかく荒れ地として無価値におもわれているが、地球上でもっとも生産性の高い場所であり、守っていかなければならないという趣旨の説明版がきれいなイラストとともに示されており、大変勉強になるとともに感動しました。


ショアライン (Shoreline) の野鳥のパンフレット

 この湾岸の鳥の様子ですが、なんといってもアメリカソリハシセイタカシギ (American Avocet) がまず目を引きます。首が白い冬羽や茶色い夏羽の両方がたくさんいます。干潟を歩いているものが多いんですが、水面を泳ぎ、キーキリ、キーキリというふうに鳴いているものもいました。くちばしが上に反っているんですが、反っている先端部分を地面と平行にして、左右に首を振って地面をなぞるようにして餌をとっていました。


American Avocetの説明部分

 この辺りは冬が暖かいせいか、多数のシギ類が越冬しているようです。アメリカダイシャクシギ (Long-billed Curlew)、アメリカオオソリハシシギ (Marbled Godwit) 等の大きいシギ類から、アメリカヒバリシギ (Least Sandpiper) のような小さいシギまでたくさんいます。なかでも、ハジロオオシギ (Willet) という中型のシギは、歩いているときは全身灰色で模様がないんですが、羽を広げると黒・白・黒とみごとな模様に驚かされます。

 カモ類は、おなじみのマガモ、オナガガモ、オカヨシガモ、スズガモ、ホオジロガモがたくさんいました。コガモはすべて縦に白線が入ったアメリカコガモなのは当然です。日本では珍しいアメリカヒドリ、オオホシハジロ、コスズガモも大群でいました。アラナミキンクロ (Surf Scoter) も楽しい模様の顔を近くで見せてくれました。日本で見られないカモはアカオタテガモ (Ruddy Duck) です。海にいる小型の潜水をするカモで、尾をピンとたてており、真っ白なほおが目立ちます。これは大群でいました。アカシマアジ (Cinnamon Teal) はシナモン色というより全身栗色の小型のカモで非常に目立ちます。行動はコガモと同じ感じでした。オウギアイサ (Hooded Merganser) という頭の毛がふさふさしたアイサの仲間も見ることができました。


Burrowing Owlの説明部分

 広い草原はアナホリフクロウ (Burrowing Owl) という足の長い小型のフクロウの生息地なので立ち入らないようにとの表示がありましたが、残念ながら見られませんでした。地面に掘られた巣穴が見えてました。草原の上にはハイイロチュウヒ (Northern Harrier) やハゲワシの仲間のヒメコンドル (Turkey Vulture) が悠然と飛び、杭の上では胸が黄色く黒いエプロンをかけたような模様があるニシマキバドリ (Western Meadowlark) がヒーヘーチョコリチョコリという感じで鳴いています。ハイイロチュウヒ (Northern Harrier)はまたの名をMarsh Hawkというそうで、このあたりのMarsh Landにはぴったりの猛禽です。ヒメコンドルは首から上に羽毛がなく赤色なので、異様な感じをうけますが、体形が似ているせいか、道を歩くかっこうはトビとそっくりです。

 池の周りや、水面にはひたいの部分が少し赤いアメリカオオバン (American Coot) が真っ黒に固まっています。ハマヒバリ (Horned Lark) も道にひらりと舞い降りました。水の深いところでは、くちばしに黒い帯があるオビハシカイツブリ (Pied-billed Grebe) 、ハジロカイツブリ、白くて長い首が小型の白鳥のようなクラークカイツブリ (Clark's Grebe) 等のカイツブリ類が潜水を繰り返しています。カモメ類はたくさん飛び回っています。セグロカモメ、ワシカモメ、クロワカモメ (Ring-billed Gull) 、カリフォルニアカモメ (California Gull) 、アメリカオオセグロカモメ (Western Gull) などを認めましたが、スコープがないとカモメのさらなる識別は困難です。メリケンアジサシ (Forster's Tern) という白いアジサシの仲間も飛んでいました。クロワカモメがボート池から取ってきた2枚貝を舗装道の10m位上に来て地面に落として割って食べているところを見かけました。付近に沢山の貝の破片があったので、いつもこのようにして貝を食べているようです。大きなカナダガンが地上10m位のところを鳴きながら飛ぶ迫力ある姿も何度か見かけました。

 木があるところでは、ハゴロモガラス (Red-winged Blackbird) が肩の赤いところを拡げてウーキーといったのんびりとした鳴き声を上げていました。サバンナシトド、ミヤマシトド、キガシラシトド、ウタスズメ (Song Sparrow) といったスズメ類もたくさん見られました。

 このショアラインは 一日かけても全部を見て回るのは困難な広さで、公園の隣接地域も自然学習地域 (Nature Study Area) が設定されており、湿地帯がはてしなく拡がっていました。これだけ沢山の鳥がいる場所なんですが、鳥見をしている人には2人しか会いませんでした。


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